「包丁の切れ味が落ちてきたけれど、どう研げばいいの?」「砥石は難しそう」と感じていませんか。燕三条で調理道具を作っているクーベル編集部が、その疑問にお答えします。
家庭の両刃包丁なら、#1000前後の中砥石が1本あれば研げます。角度を約15度に保って研ぎ、反対側に「かえり」が出たら裏を研ぐのが基本です。力はほとんど要りません。
この記事では、研ぎどきの見分け方や砥石の選び方、研ぐ手順、うまくいかないときの直し方を紹介します。
研ぎどきは「トマト」で分かる

包丁の刃先は、使ううちに少しずつ丸くなっていきます。毎日少しずつ変わるので、切れ味が落ちても気づきにくいものです。
研ぎどきを確かめるなら、トマトを切ってみるのがおすすめです。皮に刃がすっと入らず、押しつぶすように切れたら研ぎどきです。
トマトがないときは、新聞紙やコピー用紙で試す方法もあります。紙の端に刃を当てて引き、途中で引っかかるようなら研ぎどきです。
研ぐ頻度の目安は、メーカーによって幅があります。毎日料理をするなら、月に1〜2回がよく示される目安です。週に3〜4回なら3か月に1回、週に1〜2回なら半年に1回とするメーカーもあります。
ただ、切る食材やまな板の素材でも、刃の減り方は変わります。回数で決めるより、トマトでときどき確かめて、切れにくいと感じたら研ぐのが確実です。
砥石・シャープナー・研ぎ棒の違い

包丁を研ぐ道具には、砥石・シャープナー・研ぎ棒の3つがあります。それぞれ役割が違うので、まずは違いを知っておきましょう。
| 道具 | していること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 砥石 | 刃先全体を少しずつ削り、刃の形を整え直す | 切れ味が落ちたときの研ぎ直し |
| シャープナー | 溝に刃を通して刃先に細かい傷を付け、食材への食いつきを良くする | 砥石を使う時間がないときの一時しのぎ |
| 研ぎ棒 | 刃先の向きを整え、付いた脂を落とす | 使う前のちょっとした手入れ |
シャープナーは手軽ですが、刃先の形まで整えるものではありません。シャープナーだけに頼っていると刃先が弱くなり、欠けやすくなることもあります。
普段はシャープナーで補うとしても、ときどきは砥石で研ぎ直しておきましょう。切れ味がぐっと長く続くようになります。
研ぎ棒を使うときは、刃を棒に10〜20度ほど当て、片面5〜10回ずつなでるように動かします。やりすぎるとかえって切れ味が落ちるので、軽く整える程度にとどめましょう。
シャープナーを使うときのコツ

シャープナーは手軽な分、使い方で仕上がりに差が出ます。次の3つを意識してみてください。
- まっすぐ差し込む:刃を溝にまっすぐ入れます。左右に傾けると、刃先が欠ける原因になります。
- 力を入れずに引く:刃元から切っ先まで、刃の曲線に沿って同じ速さで手前に引きます。
- 回数を守る:取扱説明にある回数を目安にし、何度も通しすぎないようにします。
切れ味が落ちていない新しい包丁に使うと、かえって切れなくなることがあります。ハガネの包丁など、シャープナーを使えない包丁もあるので、取扱説明を確かめておきましょう。
最初の砥石の選び方

砥石は、表面の粒の細かさを表す「番手」で選びます。数字が小さいほど粗く、大きいほど細かくなります。
| 種類 | 番手の目安 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 荒砥石 | #400前後まで | 刃こぼれを直すとき |
| 中砥石 | #800〜#1000前後 | ふだんの研ぎ直し |
| 仕上げ砥石 | #3000前後から上 | 中砥石のあとに、刃先をなめらかに整える |
初めての1本なら、#1000前後の中砥石で十分です。表と裏で番手が違う両面の砥石なら、中砥石と仕上げ砥石を1本でそろえられます。
砥石には、使う前に水に浸すタイプと、水をかけるだけで使えるタイプがあります。準備の手間を減らしたいなら、浸さずに使えるタイプを選ぶのもよいでしょう。
研ぐ前の準備

研ぎ始める前に、砥石を整えておきます。ここを丁寧にしておくと、研ぎがぐっと楽になります。
- 砥石を水に浸す:水を吸うタイプは、泡が出なくなるまで浸します。20分ほどが目安です。
- 砥石を固定する:濡れた布巾の上か専用の台に置き、研いでいる間に動かないようにします。
- 表面を確かめる:へこんだ砥石で研ぐと、刃先が丸くなります。へこんでいたら、面直し用の砥石で平らにしておきます。
両刃包丁(三徳・牛刀)の研ぎ方

三徳包丁や牛刀など、両面に刃が付いた包丁の研ぎ方です。最初はゆっくりで構わないので、角度を変えないことだけを意識してみてください。
- 包丁を置く:利き手で柄を持ち、刃を手前に向けて、砥石に対して45度ほど斜めに置きます。
- 角度をつける:峰を少し持ち上げ、刃と砥石の角度を約15度にします。峰の下に10円玉を2〜3枚重ねたくらいが目安です。
- 表を研ぐ:反対の手の指を刃に軽く添え、角度を保ったまま前後に動かします。切っ先・中ほど・刃元の3か所に分けて研ぎます。
- かえりを確かめる:裏側を峰から刃先へ、親指の腹でそっと触ります。ざらっとした引っかかりが「かえり」で、これが出ていれば研げています。
- 裏を研ぐ:包丁を裏返し、同じ角度で研ぎます。表と同じくらいの回数が目安です。
- かえりを取る:新聞紙に刃を軽くすべらせて、残ったかえりを取ります。
砥石の上に出る灰色の研ぎ汁は、研ぐのを助けてくれます。洗い流さずに、乾いてきたら少しずつ水を足しながら研ぎましょう。
仕上げ砥石を使うときは、中砥石で研いだあとに同じ手順をくり返します。中砥石のときより軽い力で、なでるように研ぐのがコツです。
研ぎ終わったら、包丁をよく洗って水気を拭き取ります。トマトを切ってみて、皮にすっと刃が入れば完成です。
うまく研げないときの原因と直し方
初めて研ぐと、思ったように切れないこともあります。よくある例と直し方をまとめました。
| 困っていること | よくある原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 研いだのに切れない | 押すときと引くときで角度が変わり、刃先が丸くなった | 両手で包丁を固定し、ゆっくり動かす |
| かえりが出ない | 角度が寝すぎている、研ぐ回数が足りない | 10円玉で角度を確かめ直し、かえりが出るまで続ける |
| 手が疲れる | 力を入れすぎている | 添えた指で軽く押さえる程度にする |
いちばん多いのは、研いでいるうちに角度が変わる失敗です。慣れるまでは、角度を固定する補助具を使うのもよい方法です。
刃の作りを知ると、研ぎ方が分かる

包丁の刃先には、出荷するときに付けた細い刃があります。これを「小刃(こば)」と呼び、研ぐときはこの幅を目安にするのが基本です。
小刃の幅を広くすると鋭く切れますが、刃先が薄くなって欠けやすくなります。反対に狭くすると丈夫になるかわりに、切れ味は少し落ちます。
メーカーが付けた幅には、切れ味と丈夫さのつり合いが込められています。必要以上に鋭く研ぐと、メーカーの保証が受けられなくなる場合もあるので気をつけましょう。
硬い鋼を芯にした「割込」の包丁は、芯の鋼が刃先から峰まで通っています。研いで刃が減っても芯の鋼が刃先に出続けるので、研ぎ直しながら長く使えます。鋼材や割込の違いは、包丁の素材の違いでくわしく紹介しています。
研いだあとの包丁と砥石の手入れ
包丁は研ぎ汁をよく洗い流し、乾いた布巾で水気を拭き取ります。錆びにくいステンレスの包丁でも、濡れたまま置くと錆びることがあります。
研いだ直後の包丁は、刃先がとても鋭くなっています。洗うときや拭くときは、刃に沿って指をすべらせないよう気をつけましょう。
砥石も使い終わったら水で洗い、日の当たらない場所で乾かします。研ぐたびに表面が少しずつへこむので、ときどき面直しをしておくと次も気持ちよく研げます。
自分で研ぐのが難しいときは
砥石を使う時間がないときや、刃こぼれが大きいときは、研ぎ直しを頼む方法もあります。大きな刃こぼれを荒砥石で直すのは、慣れた人でも時間のかかる作業です。
研ぎ直しは、包丁のメーカーや刃物の専門店、金物店などが受け付けています。お使いの包丁のメーカーが研ぎ直しをしているかは、取扱説明やメーカーのページで確かめてみましょう。ひとりで悩まずに、プロの手を借りるのもひとつの選択です。
包丁の研ぎ方に関するよくある質問
Q. ステンレスの包丁も研げますか?
A. 研げます。ハガネより少し研ぎにくいといわれますが、家庭の砥石で十分に研げます。
Q. 片刃の包丁は研ぎ方が違いますか?
A. 違います。出刃包丁などの片刃は、刃の付いた表側を中心に研ぎます。裏側は砥石にほぼ平らに当て、かえりを軽く取る程度にとどめます。
Q. 仕上げ砥石は毎回使ったほうがいいですか?
A. 家庭の包丁なら、中砥石だけでも十分に切れるようになります。仕上げ砥石まで使うと刃先がなめらかになり、切れ味が長持ちしやすくなります。
Q. 砥石は水に浸けたままにしてもいいですか?
A. 浸けっぱなしは避けましょう。使い終わったら水で洗い、日の当たらない場所でゆっくり乾かします。ドライヤーなどで急に乾かすのも避けてください。
Q. シャープナーだけではだめですか?
A. 一時的に切れ味は戻りますが、刃先の形は整いません。普段はシャープナーで補い、ときどき砥石で研ぎ直すのがおすすめです。
まとめ
【この記事のまとめ】
- 研ぎどきは、トマトの皮に刃がすっと入るかで確かめる
- シャープナーは一時しのぎ。ときどきは砥石で研ぎ直す
- 最初の砥石は、#1000前後の中砥石が1本あれば十分
- 角度は約15度(10円玉2〜3枚)を保ち、かえりが出たら裏を研ぐ
- 力はほとんど要らない。角度を変えないことがいちばんのコツ
研げる包丁は、手入れしながら長く付き合える道具です。切れ味が戻ると、毎日の料理がぐっと楽しくなります。
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